昨年末に 約20年前から開発を進めていたAIS-ROMⅠ(油分濃度計測システム)を完成させました。
今回は、AIS-ROMⅠの開発までのストーリーから試行錯誤を経てたどり着いた機能についてご紹介いたします。
石井社長に開発当時のことを振り返っていただきました。
これまでの洗浄機は、洗浄時間・乾燥時間など洗浄にかかわるすべてのことを人が設定しており、“洗浄”は作業者の感に頼られたものでした。
アクトファイブの社是である「科学する洗浄」の通り、アクトファイブはただ洗浄装置を製作するだけの会社ではなく、“洗浄”を突き詰め、常に新しい洗浄技術の開発に力を入れています。
洗浄の指標がない
洗浄業界の通例として、洗浄機を検討する際、まず洗浄実験をします。洗浄実験をして初めて結果がわかります。 「この洗浄液を使って、あのメーカーの超音波を使って、5分間 揺動させながら洗浄すると、こんな洗浄結果が出ました。」
実験をやって初めて結果がわかるなんておかしい!どうにかお客さんが納得できる説明はできないだろうか、と考えました。
洗浄の方程式を発見したい
洗浄理論をつかみたい。 たとえばy=axのような方程式を発見し、洗浄の関係性が分かれば、洗浄結果は予測できるはずだ。 洗浄の関係性がわからなければ、いつまでたっても洗浄技術は発達しない。 そう考え、まずは洗浄液の油分濃度をリアルタイムで把握する必要性を感じました。
洗浄液のGPSを探して
話は少しそれますが...カーナビを思い出してください。 カーナビがこの世に存在する前、昔はドライブ出発前に、地図を見ながらルートを確認し、地図に印をつけて目的地まで自分でルートを決めていました。 しかし今ではGPSと地図データのおかげで自動車の現在位置を知ることができるため、目的地を設定し案内開始ボタンを押すだけで、道案内が可能になりました。 GPSがあるからこそ、これまでの面倒な作業が一気に不要になりました。
洗浄の世界もこれと同じです。 リアルタイムで洗浄液の油分濃度を把握することで、必要な洗浄・乾燥等の情報を予測することができます。
そこで、洗浄液のインライン式油分濃度計を探しましたが、ドイツ・アメリカを含め、世界中どこを探しても油分濃度測定機器は存在しませんでした。 それならば自分で作るしかない!と自社で油分濃度測定の開発を決心しました。
いずれ洗浄実験は不要になるだろう
構想20年、開発に5年費やし、昨年2015年12月の洗浄総合展で油分濃度測定システム、AIS-ROMⅠ※を世の中に初披露いたしました。
これからはカーナビのようにあって当たり前、無いと不便な油分濃度測定機器「AIS-ROMⅠ」となるでしょう。
毎回毎回、洗浄実験をしなくても洗浄結果を予測できるように。 今後は洗浄実験を「検証」にすることを目標にさらなる研究開発を進めております。
※ROMとは....?
ROM:Removal Oil Monitor の略。 【吸収スペクトルを利用した油分濃度測定器】
基本的な思い:特定ユーザのニーズのための開発ではなく、洗浄装置を良くしたい・洗浄品質をちゃんと見たい。という思いのシーズ型の開発。
*ROMⅠ:プロトタイプ
*ROMⅡ:ROMⅠをダウンサイズし洗浄装置に組み込み導入しやすくしたもの
≪2016年6月21日に特許になりました!≫
開発担当者 小笠原のここだけの話。
AIS-ROMⅠ開発時の技術的ポイント!
基本的な測定原理の確認実証の為の、膨大なスペクトル測定と分析がとても大変でした。
加工油の種類が膨大にあり、測定したスペクトル数は数百種類を超えたことを覚えています。
ハード&ソフト的には、「精密分光測定技術」をインライン測定が可能なものに展開するところが技術的ポイントで大変苦労しました。
AIS-ROMⅠの開発によるメリット
~油分濃度計測が必要なワケ~
油分濃度計測システム、AIS-ROMⅠの完成によって、被洗浄物(金属部品等)についた油の濃度を洗浄工程で常時監視し、洗浄を進める中設定した濃度を下回った時点で「無駄なく、確実に」洗浄を終えられます。
アクトファイブが提唱している「洗浄工程の知能化」で、装置自身が洗浄や乾燥が完了したことを確認して稼働を止め、無駄なく部品洗浄の品質向上と安定をはかり、タイマーでおおよその洗浄・乾燥等の時間を設定する、現在のスタイル: 作業者の感に頼った洗浄工程を革新できます。 AIS-ROMⅠの開発成功は、世界初の快挙で、脱脂不足や残留コンタミ、乾燥不良の問題はすべてなくなるでしょう。